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満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】

第34章 くらし、始まる※《宇髄天元》



多くの遺体は、遺族が引き取れるように蝶屋敷で働く人々が処置をした。
傷だらけの遺体を、出来るだけ綺麗に処置をして、保護と清潔を心がけた。
隊服や刀、持ち物などは、すべて遺族に遺品として渡した。
引き取る遺族がない場合はこちらで産屋敷家が火葬し、墓を作ってくださった。
やるべきことは山のようにあった。

波奈は今日、自宅療養をしている元隊士の訪問看護を終え、その帰り道に雨が降り出し足止めを食らった。

嵐のような春の雨だった。
この雨で桜はもう全て散ってしまうのだろうか。
雨を避けて木の下に逃げ込んだものの、冷たい雨が波奈の身体を冷やしていく。

さきほど訪問した元隊士は、あの死闘で腕を失った。
幻肢痛に悩まされて、効くかどうかもわからない鎮痛剤を渡した。
失ってしまった右腕はたいそう不便そうだった…

「おい」

大きな影に覆われて、見上げるとそこに立っていたのは大きな男だった。
ーーー音柱、宇髄天元。
波奈は美丈夫の彼がいきなりに現れたので、ハッと息を呑んだ。

「お、おと、柱様…、」
「元、な」

かつての彼の呼び名をつい口に出すと、彼はふ、と顔を綻ばせた。

「んなとこで何してんだ、冷えるだろう」
「……」

「…飯でも行くぞ、奢ってやる」

パシンと腕を掴まれて、強引にも波奈は元柱の男に連れられた。


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