第1章 出逢い
.
しかし
バーテンダーって言うのは、客についてベラベラ喋らないものらしい
俺はこのバーに通い始めてから、すぐに相葉くんと仲良くなったのだが
なかなか君のコトを教えてはくれなかった
んで
時間をかけ、しつこくしぶとく訊いた結果
漸く最近、少しずつ君の事を聞き出す事が出来るようになったのだ
そうやって、やっと集めて知った君の事、それは…
.
大野智という名前
ニノが高校生の時
ニノが通っていた高校で、当時美大生だった君が、アルバイトで臨時の美術講師をしていた事
今は
その時知り合った、ニノの同級生の“松本くん”って奴の恋人で
彼の用意したマンションに住んでいるコト
…要は、松本くんが大野くんを…囲っているらしいってコトを知った
.
大野くんが酔っ払って潰れたのを見たのは、初めて会ったあの時だけだったけど
その酔っ払っても“仕方がない”理由には、正直絶句した
.
『あの日松本くん、取引先のおじょうさんと、結婚したんだ』
相葉君が珍しく険しい表情で言った
『そんで、新居が会社からとおいからってタテマエで、おーのくんにマンション借りたんだって』
.
…あの日…カウンターの奥で独り…空っぽのグラスを見つめながら
君は、何を想ってたのだろうか…
.
.