第10章 if…快適過ぎて逆に困る(2)
ネオン街を駆ける、駆ける、駆ける。あぁ…息が苦しい。でも立ち止まっては駄目だ。もし捕まってしまった時、私自身がどうなるのかは分からないけれど…あのギラギラした目で追い掛けて来る男達は危険だと私の中で警告音が鳴り響いていた。
何とか男達を撒きながら大通りを走り抜けて路地裏に曲がろうとした時、ドンッと勢い良く人にぶつかってしまい尻もちをつく。痛むお尻に顔を歪め、鼻を思い切り打ったと顔を押さえながら目の前を見ればミントグリーンのストライプ柄、スリーピーススーツが視界に入った。
「いってぇな。どこ見て歩いて……んだ、ょ」
「ひっ、ぁの…す、すみません…っ」
「えっ、いや…大丈夫、えっ?はっ?女、の子?」
ドスの効いた声に体を震わせて萎縮してしまい、明らかにカタギではないお兄さんを見上げる。そこにはウルフカットで紫色、青色のメッシュが印象的な髪型をしたお兄さんが菫色の瞳をこれでもかというくらいに大きく見開いて固まっていた。
「おい、さっきの奴どこに行った!」
「まだ近くにいるはずだ、くまなく探せ!」
「っ!」
バタバタと私を探す足音に、体を硬直させる。どうしよう…逃げなきゃ、でもどこに?そもそも目の前のお兄さんが私を逃がしてくれるかどうか…そう色々と考えを巡らせていれば私の手首を掴んだお兄さんがいた。
「理由は良く分かんねぇけど、何か訳ありっぽいよな…立てるか?」
「えっ、は、はいっ…」
「今は走るぞ、俺に付いて来て…」
手首を掴んでいるお兄さんはグイッと勢い良く私を引っ張り上げて、こっちだと言い私を連れ去るように走る。全くもって訳が分からない今の状況に目を回す私は、これ絶対夢じゃないと息切れしそうになる胸の痛みをぐっと我慢した。
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