• テキストサイズ

取り敢えずケーキが食べたいです【東卍夢(梵天)】

第1章 快適過ぎて逆に困る。


私、水無月栞は男女比率のあべこべな異世界に来てしまったらしい。そして見目麗しい男性達に囲われてしまっていた。なんか気持ちがいっぱいいっぱいで泣きそうだ。

ーーー

もう本当に訳が分からない…だって今日もいつも通りの日常を過ごし、仕事を終えて帰っていた最中だったのだ。疲れた体に鞭を打ち電車に乗って家に帰ろう、今日は給料日だから自分のご褒美としてケーキを買って帰ったのだ。電車を待つ間、線路前に立っていた。そんな時私の背中を何かが押した、ぐらりと傾く体は線路上に転がりそのまま電車にドンとーー…

ーーー

目が覚めると、煌びやかなネオン街が広がっていた。知らない場所にいる私はさっきまで電車に轢かれた事を思い出し怪我を全くしていない自分自身に酷く混乱した。夢?それともあの世とか?いや…そんな馬鹿な。荷物も全てない為、私だけがここにいるということになる。誰かに助けを求めようにも何だか酷く視線を感じて居心地が悪い。逃げるように立ち去ろうとすると、私を追い掛けて来る知らない男達に冷や汗が止まらない。嫌だ、絶対に捕まっては駄目だ、嫌な予感しかしない…怖いっ!怖いっ!怖いっ!誰か、助けてっ!

路地裏へと逃げ込んだ私は、見付からないように息を潜めた。可笑しい、絶対に可笑しい。私を必要以上に追い掛け回して来る所とか、何より先程までずっと走っていたのに女の子が誰一人外を出歩いていないのである。一体何なのよこの世界。お願いだから夢なら早く覚めてよ…っ

その時、コツコツと革靴を鳴らした音がこちらへと近付いて来る。身を縮こませ顔を俯かせながら必死に隠れていたけれど、相手は私に気付いているようだった。そのまま相手は大きな体を屈ませて驚いた様子で私へと声を掛ける。

「はっ…?えっ、お、女の子…だよな?」

ビクッと肩を震わせて、おずおずと声を掛けられた方を見上げる。そこにはとても端正な顔立ちの男性がいた。ピンク色のさらりとした髪に、白い肌、長い睫毛に翡翠色をした瞳が私をポカンと覗かせていた。口元の傷が少し痛々しいけれど、それでも彼の色気を引き出しているように見える。目の前の男性は私を上から下へ視線を向けてから、混乱するように私へと問い掛けた。
/ 104ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp