第5章 ゼノ=ジェラルド
お互いの国で婚約を発表してから数ヶ月。
ゼノ様は相変わらず忙しい日々を送っていた。
シュタインとウィスタリア、二つの国の公務をすることは考えただけで大変なのがわかる。
私も出来る限りのことはしていたが、その忙しさはゼノ様の半分程の気がした。
キャリー「ユーリ、今日もゼノ様は遅いの?」
私が尋ねるとユーリは切ない表情を浮かべて答える。
ユーリ「今日は戻れるかどうかも分からないって言ってたよ。」
答えは分かっていた。
私が眠ってから戻り、起きる頃にはまた公務に行っている。
前にお顔を見れたのはいつだったか。
ユーリ「今の公務はこれからキャリー様と過ごす為の大事なものだから。もう少ししたら落ち着くと思うよ。」
キャリー「今、どんな公務に行ってるの?」
ユーリ「今日はもう遅いから休んで。明日はウィスタリアに行くんだし。」
私の質問には答えずユーリは部屋から出て行ってしまった。
…そう。最近ゼノ様は忙しくしているが、その内容が分からない。
皆が私に秘密にしている感じだ。
私に出来ることは何だろう。ゼノ様を少しでも手助けしたいのに。
私は眠れぬままゼノ様の部屋へと続く扉を見つめた。