第1章 R h p l ss
フィリピンなんて来るんじゃ無かった。
昔から正義感が強かった私は
他人を貶めたり虐める奴が許せなかった。
フィリピンでは至る所で紛争が起きており、記者とは言え今行くのは非常に危険だから行くなと先輩に止められていたのに。
それでも現地に赴いたのは
私なりに譲れないモノがあったからだ。
何としても悲惨な現状を世界に伝えたかった。
自分1人では力も無く何も出来ないかもしれないが
少なくとも、多くの人に知ってもらう事で
救われる命もあるとそう思ったからだ。
現地について早々、路地裏に入ると
痩せ細った少女を殴っている大柄の男がいた。
無抵抗な少女に執拗に行われる無慈悲な暴力。
少女の体は痣だらけで日常的に暴行されているのだと容易に想像できた。
全身の血が沸騰し、フツフツと怒りが湧き上がっているのが自分自身でわかった、恐ろしく気分が悪い。
気がつくと私は大柄の男に襲いかかりその少女を庇っていた。
結果勿論その男に返り討ちにされた挙句、必死の抵抗も虚しくその男は私に馬乗りになっていた。
うまく聞き取れなかったけれど
どうやら私の事を「犯す、殺す」と喚いているようだ。
瞳は血走り、高揚した男の顔をを見た瞬間
あぁ、もうだめなんだと心の奥底で諦めた。
一刻も早く事が終わるようにと深く目を瞑った。
「諦めんな」
そう日本語で聞こえた。
おかしい、ここはフィリピンな筈なのに母国語が聞こえるなんて・・・。
私はショックの余りイカれてしまったのだろうか。
恐る恐る目を開けると先程まで私に跨っていた男の姿が無い。
地面に縫い付けられていた体が自由に動き、
私は先程の声の主に目をやった。
黒髪で細身の男性・・・と思われる人がそこに居た。
恐らく声からして男性なんだろうが
あまりにその容姿が綺麗だった。
その綺麗な人の対角線上の壁に
大柄の男は項垂れ、暫く目を覚ます様子はない。
どうすればあの男が吹き飛んだのか現状把握が難しく考えた所で結局何が起きたのかわからなかったが、どうやら私は助かったらしい。
「おい、オマエ立てる?」
黒髪の綺麗な人に手を差し出され
その手を取ろうとした最中
私の意識はそこで途絶えた。