第10章 大島桜
ートントン
「ハーイ、お〜メイ?どうしたネ」
「差し入れ。ちょっと重いかもしれないんだけど。至さんのリクエストだから、文句は至さんに」
「おー、ヒジ」
「惜しい、ピザかな。そして、それをいうなら膝かな。」
「綴と同じくらいツッコミうまいネ!」
「咲は?」
「お風呂ネ。」
お風呂、そっか…。
「ならちょっと、タイミング悪かったね。」
「メイもここで待つ…」
「んーん、他の部屋にも持ってかなきゃだから、」
「ワタシも手伝うヨ?」
「ありがとう、でも大丈夫。…咲に謝りたかったの、最近距離を感じるから、何でだろう?って。まぁでもいつでも謝れるし、だから大丈夫。冷める前に食べちゃって、熱々で美味しいハズだから」
ニッコリと笑って次の部屋に行こうとすると、私の持っていたお盆の上に自分達の分を置き直して取り上げた。
「シトロンくん?」
「メイもサクヤもヘタクソネ」
「なにが?!」
「仲直りダヨ。
熱々もイイけど、みんなで食べた方が美味しいヨ。イタルの部屋でみんなで食べるネ」
「え、」
シトロンさんに言われるがまま、後ろをついてく私もどうかと思うんだけど…
「ツヅルにマスミ、早く部屋から出てくるネ!オカアサン参拝ネ!」
「うるさい、お前ら何時だと思ってるの?…って、何でピザ?」
「夏組に差し入れたから、みんなに持ってこうとしたらシトロンくんが」
というと、納得したようにうなづいた真澄くん。
…興味は無さそう。
「イタルの部屋集合ネ。ついでに宿題教えて貰うヨ」
考え込んだ真澄くんが思いついたように言った。
「1人でもできる。…でも、アンタがいるなら俺も行ってもいい。」
私がいるからって、また珍しいな。
「真澄くん…」
「アンタよく監督と話してるから、その内容全部吐かせる」
「え、…あ、あはは。ははは、綴くんは?」
「風呂。咲也といった。」
咲とお風呂か、いいな…綴くんは兄弟じゃないのに、咲と仲良くて。
「ねぇ」
「ん?」
「言っとくけど、アンタも春組の家族だから。」
「…」
見透かされたような言葉にドキッとする。
そのままプイッとそっぽを向かれてしまったけど、じんわり心があったかくなる感じがする。
「ありがとう、真澄くん。シトロンくん」