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3月9日  【A3】

第10章 大島桜


 ートントン

 「ハーイ、お〜メイ?どうしたネ」
 「差し入れ。ちょっと重いかもしれないんだけど。至さんのリクエストだから、文句は至さんに」
 「おー、ヒジ」
 「惜しい、ピザかな。そして、それをいうなら膝かな。」
 「綴と同じくらいツッコミうまいネ!」
 「咲は?」
 「お風呂ネ。」

 お風呂、そっか…。

 「ならちょっと、タイミング悪かったね。」
 「メイもここで待つ…」
 「んーん、他の部屋にも持ってかなきゃだから、」
 「ワタシも手伝うヨ?」
 「ありがとう、でも大丈夫。…咲に謝りたかったの、最近距離を感じるから、何でだろう?って。まぁでもいつでも謝れるし、だから大丈夫。冷める前に食べちゃって、熱々で美味しいハズだから」

 ニッコリと笑って次の部屋に行こうとすると、私の持っていたお盆の上に自分達の分を置き直して取り上げた。

 「シトロンくん?」
 「メイもサクヤもヘタクソネ」
 「なにが?!」
 「仲直りダヨ。
 熱々もイイけど、みんなで食べた方が美味しいヨ。イタルの部屋でみんなで食べるネ」
 「え、」

 シトロンさんに言われるがまま、後ろをついてく私もどうかと思うんだけど…

 「ツヅルにマスミ、早く部屋から出てくるネ!オカアサン参拝ネ!」
 「うるさい、お前ら何時だと思ってるの?…って、何でピザ?」
 「夏組に差し入れたから、みんなに持ってこうとしたらシトロンくんが」

 というと、納得したようにうなづいた真澄くん。
 …興味は無さそう。

 「イタルの部屋集合ネ。ついでに宿題教えて貰うヨ」

 考え込んだ真澄くんが思いついたように言った。

 「1人でもできる。…でも、アンタがいるなら俺も行ってもいい。」

 私がいるからって、また珍しいな。

 「真澄くん…」
 「アンタよく監督と話してるから、その内容全部吐かせる」
 「え、…あ、あはは。ははは、綴くんは?」
 「風呂。咲也といった。」

 咲とお風呂か、いいな…綴くんは兄弟じゃないのに、咲と仲良くて。

 「ねぇ」
 「ん?」
 「言っとくけど、アンタも春組の家族だから。」
 「…」

 見透かされたような言葉にドキッとする。
 そのままプイッとそっぽを向かれてしまったけど、じんわり心があったかくなる感じがする。

 「ありがとう、真澄くん。シトロンくん」
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