第7章 夜這い
『え?
何か言いました?』
「気のせいだろ
──ほら、着いたぞ」
ゆっくり御簾が上がり
頼朝は慣れたように
牛車から降りた
(わ、意外と高い…)
行きしは盛長に乗せられた為
あまり高さを感じなかったが
今は何とか1人で降りなければ
ならない
(ゆっくり……)
そーっと手を柱に捕まりながら
降りようとした時
「……早くおいで」
ふわりと抱き上げられた
『っ!!』
思わず身体が強ばる
『あ、ありがとうございます……』
優しく降ろされたあと
お礼を言うと
「いや、足場が悪かったからね
今度は足台を用意しよう」
(何このキラキラスマイル…
あ、演技中か──…)
無駄に発光する笑顔に
引きつっていると
「ようこそおいでくださいました!
征夷大将軍、源頼朝様!!」
ずらりと並んだ家臣の真ん中を
悠々と歩いていく頼朝
(…私どうすべきだろう)
ここにいた方がいいのでは
いつあやかしが来るか分からない
戸惑っていると
頼朝は足を止めて
振り返った
「何をしてるんだい?」
『えっ』
「君は私の側仕えだよ
早く来なさい」
”傍にいろよ”
『っ!はい』
慌てて頼朝の後ろについて行った