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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第13章 英雄ぶるのも大概に


●リコ side● 〜体育館〜


先程の試合を観た上で「頭に血が昇りやすい」と言われ、火神(お前)にだけは言われたくない、と言い返したかった。しかしそれよりも、今こうして火神に怒りをぶつけていることを、「オレのせいではなく天(お前)の勝手だ」と言われた様に感じた。


それまで左手だけで掴んでいた火神の胸ぐらに、我慢の限界だった天は右手も手にかけた。そして、先程よりもさらに強い力でその巨大を引き寄せる。


『お前に私の何が分かる?!
 私が何を見たのか…
 そのせいでどれだけ傷ついて、
 どれだけの犠牲を払って…』


これまで起きた全てのことを思い出しながら、天は悔しそうな、それでいて苦しそうに、自分の発する言葉一つひとつを噛み締める。


『どんな思いで仲間を…
 どんな思いでバスケを捨てたのか!!』


両手に込める力が、自然と強くなるのを感じた。火神の言葉を否定したい一心だったが、事実こうして天はプレイヤーにならない道を選んでいた。
その矛盾に本人が気付いてしまったのか、「やり直せるもんなら…とっくに」という言葉だけは、弱々しく天の口から発せられた。


言葉だけでなく、鋭い視線で自分を全力で否定してきた天の目が、この時までは憎悪や敵意で満ちていたのに。一瞬だけ、その目に哀愁がチラついたことは、火神だけが気づいていた。


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