第4章 初めてのキスはレモン味 伊黒小芭内
「瀬田くん…」
「っ… 紗夜…!」
今までずっと黙っていた月城が、遂に口を開いた。
「今までごめんね…」
月城はフッと微笑む。
それは何かを諦めたような、そんな表情で…
「………さよなら」
その一言だけ言い放つと、月城は店を出て行った。
「紗夜っ…待ってくれ!」
瀬田は慌てて追いかけようとするが、俺は腕を掴みそれを阻止する。
「離せ伊黒!」
「行ってどうする。謝るのか?
ただ謝ってまた今まで通りに戻れると…本気でそう思うのか?」
「っ……それはっ……」
「俺が行く」
瀬田は悔しそうに顔を歪めた。
行った所でもはや自分には何も出来ないと分かったのか。
今更後悔でもしているのか…だがもう遅い。
俺は一度鞄にしまったハンカチを取り出し、竹下の座るテーブルにバンッ‼︎と力いっぱい叩きつける。
「これは貴様に返す。
不純な動機の贈り物など俺は受け取らない」
竹下の顔は青ざめていた。
コートを羽織り、月城が置いていったコートと荷物も抱える。
「悪いが、後を頼む」
「ええ、ここは任せてください。
それより、早く行ってあげてくださいね。
紗夜さんきっと待ってますから」
肩を落とし項垂れる瀬田の前を素通りし、店を出ると、俺は走り出した。