第4章 初めてのキスはレモン味 伊黒小芭内
程なくして、月城の住むアパートに着いた。
綺麗な新しめのアパートだった。
涼しい夜風にあたりながら歩いたせいか、着いた頃には酔いもすっかり醒めていた。
「送ってくれてありがとう、伊黒くん」
「あぁ。寒いだろう、もう中に入れ」
「うん……ねぇ」
「ん?」
「伊黒くんは……やっぱりいいや、ごめんね、今の忘れて」
「?……そうか」
言いかけて忘れろとは、とてもモヤモヤの残る感じだが…本人が言わないのならば仕方ない。
「じゃぁ、また月曜日にね」
「あぁ、おやすみ」
「おやすみ、伊黒くん。気を付けて帰ってね」
笑顔で手を振る月城。
俺も手を振り家路につく。
月城は俺が見えなくなるまで手を振っていた。
手を振りながら見せてくれたあの笑顔は、自分だけのものではないと分かっている。
だからそれが少し切ない。
手に入らないものだと分かっている。
だから余計に恋焦がれてしまう。
こんな気持ち、いつぶりだろうか。
手品みたいにこの気持ちはパッと消したりできないから
この胸の中にちゃんとしまっておくから
もう少しだけ、君の事を想っていてもいいだろうか
この淡い恋心が、いつか綺麗な想い出に変わるその時まで…