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【鬼滅の刃】after story【闇を照らして】

第1章 闇を照らして 祝言



婚約をしてから初めて迎える春。
暖かくなったからだろうか、街の賑わいもなんだか浮足立っているように感じる日。

し「お待たせしました、月奈」

「いえ、お呼び立てして申し訳ありません」

既に着席していた月奈に声をかけたのは紫の瞳で穏やかな笑みを浮かべた女性。胡蝶しのぶ、小柄な体の女性ではあるものの政府非公認の鬼殺隊の中でも最強の隊士達〔蟲柱〕を拝命している。

蜜「しのぶちゃん、遅かったわね。蝶屋敷で何かあった?」

そう問いかけたのは甘露寺蜜璃。これまた〔恋柱〕を拝命している隊士だ。三つに結った髪は桃色で毛先にかけて緑へと変わっている。しのぶよりも先にこの甘味処に到着していた二人は先に席についていたのだが…

し「私、それほど遅かったでしょうか?」

そう言いながらテーブルの上に積み上げられた沢山の器と、それを前にしてまだあんみつを食べている蜜璃の隣に座ると運ばれてきたお茶を啜る。

「いえ、これはいつものことでは…」

ははは、と月奈が困ったように笑うと蜜璃がじとりと視線を向けて来た。

(…それでも匙を離そうとはしないところは流石ですよ蜜璃さん)

蜜「だって…ここのあんみつ美味しいんだもの!仕方ないのよ!」

し「それはさておき…」

蜜「しのぶちゃん!!酷いわ酷いわ!」

甘露寺さん、としのぶがニコリと微笑むとピタリと動きが止まる。何故ここに来たのか、ようやく思い出したようだ。
二人は姿勢を正すと改めて月奈に向き直る。

「事前に杏寿郎様の要に文を届けて頂いたのですが、改めて…」

蜜「師範は?てっきり一緒に来るのかと思ってたわ」

し「煉獄さんは本日お館様の所へ行ってるそうですよ、恐らく内容は大差ないのでは?」

「あれ?しのぶさんはご存知だったんですか?」

しのぶの言う通り、杏寿郎は今お館様の元に向かっている。
ただそれを話した記憶が無い月奈は首を傾げた。
杏寿郎が話したのだろうか。

(まぁ、それもあり得る話よね。別に問題は無いし)

し「それにしても随分と急ぎましたね。何か事情が?」

「事情があると言えば…ありますね」

月奈が頷くのと同時に店員が器を下げに来る。もしや厨房の器が無くなったからでは?と思わせる程積み上げられた器を見ながら月奈はお茶を啜った。
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