第13章 証拠
「そいつだけじゃない。重体でずっと入院してるやつが何人もいる。
俺は全員のご両親に土下座して回ったよ。
そしたらさ、誰も俺のこと、責めなかったんだよ。信じられるか?
あそこに住んでる人達は、そういう人たちなんだよ。
だから余計に悔しかった。守ってやれなかった自分を恨んだ。
恨んで、もう二度とこんな事は起きないようにしようと誓った。」
その目には、確固たる意思が秘められていた。
止められないのか、この抗争は。
「…さんっ!」
「……千冬」
「俺は…嫌だ、さんとやり合うなんて…」
さんが、目に水の膜をはって顔を歪める千冬の側に近寄る。
そして、その細くて長い指で優しく頬を撫でた。
その姿は総長ではなく、普段の優しいさんに見えた。
「千冬。ごめんな。
もしも、もし住んでるところが近くてさ、俺も東卍入ってたら、みんなと争うこともなかったのにな」
「…っさん…!」
「でも、ダメなんだ。俺にはDES・Rowの、大好きで大切な、自慢の仲間が沢山いる。総長としての責任もある。
だから、千冬。もし戦いの場で俺とあったら、躊躇わず殴ってこいよ。お前は東卍の副隊長松野千冬だ。」
千冬の頭をぽんぽんと叩き、今度こそさんは帰っていった。
止められなかった。
「…今までで、一番苦しい戦いになるな」
「ああ、メンタル的にも、戦力的にもな」
稀咲鉄太。
お前だけは許さない。