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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第22章 落花流水 前



光秀と三成の視線が一瞬だけ混じり合った事に気付いた家康は、二人が意識を向けている先が、薬包紙に薬草を包んでいる若旦那に対するものだと勘付き、気付かれぬ程度に背筋へ警戒を走らせた。

「そういえば凪様、高熱を出されていらっしゃったとの事でしたが、そのご様子だと快復されたのですね。安心致しました」
「心配かけてごめんね、三成くん。家康のお薬と光秀さんの看病のお陰ですっかり元気になりました」
「元気な凪様にお会い出来て、私も嬉しいです。ところで凪様、そのお化粧もお着物も、とてもよくお似合いですね」
「あ、ありがとう…。なんかそう言われると照れるな」

光秀との視線を自然と断った三成は、凪の姿を目にして表情を綻ばせる。裏表の無い、心底案じていた様子を滲ませる三成に、凪が気恥ずかしそうにはにかんだ。にこにこと柔らかな笑顔を向け合う三成と凪の空間はすっかり癒やし空間である。そういった二人を眺めていると、つい緊張感も薄れてしまいそうで、家康は若干遠い目をしながら顔を背けた。

「それにしても家康、お前が三成と共に並び立ち店に訪れるとは、珍しい事もあるものだな」
「何処をどう見れば、あいつと並び立って来たように見えるんですか」

腕組みしながら声をかけた光秀が、明らかな揶揄を含ませて口角を上げる。どう考えても不可抗力過ぎる状況を前に、敢えてそんな事を言う男の顔を一瞥した家康が些か棘のある声を発した。

「実は家康様の御殿へ書簡を届けに参ったのですが、ちょうどお出掛けになられるところでしたので、是非私もとご一緒させていただいたのです」
「俺は一言も許可してないけどな」
「随分先を急がれていたご様子でしたが、こうしてお二人にお会いする為だったとは驚きました」
「早足だったのは、お前と並んで歩きたくなかったからだよ」

(会話が噛み合ってない……)

つまり家康の御殿へ用事があって行ったら、ちょうど出掛けるところだったから、それに付き合ったらこうなった、という事である。三成と家康の噛み合わない会話はいつもの事だが、若干家康が疲労を滲ませる様が見えて、つい凪は内心で苦笑した。

「光秀様と凪様はお買い物中ですか?」
「ああ、逢瀬の最中(さなか)だ」
「!」

(……逢瀬、ってつまり何?)

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