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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第2章 軍議と側仕え



────────…

女中にお前の荷を用意するよう命じておいた。下手な事は考えず、今夜は大人しくしていろ。長旅という程の距離ではないが、遠出には変わりない。休める内に身体はしっかりと休めておけ。明朝、迎えに来る。

「業務連絡するだけして、肝心の目的も何も一切言わないで帰ったな、あの人…!」

軍議を終えた後、反論などできる間もなく、明智光秀に【貸し出される】事になった凪はとてつもない疲労感を抱えながら広間を後にした。
好きに使えと与えられた一室で、ひとまず早々に休みたいと足早に向かいかけた直後、音もなく背後からやって来た光秀が、道すがら送るというていで凪の横に並び、告げたのが先程回想していた言葉である。

「遠出じゃないけどそれなりに距離があるって、この時代の移動方法考えれば大体遠出扱いでしょ」

憮然と文句を零したところで当然聞き手などいないが、つい口にせずにはいられなかった。
突然タイムスリップしたと思えば織田軍によって強制的に保護され、信長に目をつけられるや否や験担ぎ兼世話役になれと任じられ、更には明智光秀の謎の任を手伝う羽目になるとは。

「波瀾万丈が過ぎるよ…」

ふかふかとした上等な座布団の上で足を横に崩して座り、溜息と共に項垂れる。着慣れない着物も、命の危機しか感じない状況や暗雲立ち込める人間関係も、凪の気を滅入らせるには充分過ぎる要素だった。

「今って何時くらいかな」

障子の向こうは明るく日が射している。昨夜から今朝方にかけて夜通し騎馬で駆けて来てから、軍議の場に呼ばれるまでに佐助との二度目の邂逅や、信長の前に出るにあたっての身支度にもそれなりに時間がかかった。
軍議に至っては緊張のあまり時間の感覚がなく、何なら半日くらいあの場に居たような気すらするが、実際にはそこまでの長丁場ではなかっただろう。

「スマホの充電、まだ大丈夫だったかな。とりあえず見てみるか」

果たしてそこに記されている時刻と今のそれが対応しているかは疑問だったが、なんとなく現代との繋がりを確認したくて、タイムスリップ時に手にしていた数少ない持ち物を探す。

「え…?」

広々とした室内を見回すも、そこにあるのは部屋に予め用意されていた調度品だけだった。

(三成くんに部屋を案内してもらった時に、文机の近くへ置いた筈なのに)

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