第30章 貴方を超えて
手早く大型魔獣を鎮め終えたレティシア達が帰ろうと大通りに出ると1人の男の子が、ぱっと表情を明るくした
男の子
「お家、直してくれたお姉ちゃんだ!」
元気な声を上げてレティシアに駆け寄って来たのは、エドゥアルを捕まえた日に声を掛けてくれた子の1人だった。
レティシアは男の子の視線に合わせてしゃがむ
男の子
「あの時はお家を直してくれてありがとう!お姉ちゃん達のおかげで皆、嬉しそうだった!」
レティシア
「そうか…良かった」
男の子の声に反応してかレティシアとリアムにルシアン、ノアの周りに人が集まってきた
男性
「俺は魔法使いが怖いと思っていた…だが、大きな勘違いをしていた事に気付いた。君達の仲間は身体を張って魔獣から俺達を守ってくれた…守護官という名が良く似合う人達だ」
女性
「ええ、本当よね。こんな事があったから…貴方達、魔法使いからしたら掌を返された気分になるでしょうけど…本当に反省しているわ」
それからも魔法使いに対して謝ったり後悔するような声が聞こえてきて、レティシアは立ち上がる
レティシア
「自分が持っていない未知のものは誰だって怖い。…それも理解しているつもりです。でも、今回…皆さんが魔法が怖くないと思って下さったのなら私は嬉しいです。今までの行いが消えるわけじゃない…だが、これからが変わるのを私は願っています。魔法が使えても…中身は皆さんと同じ人間ですから」
彼女の言葉に全員が柔らかい笑みを浮かべて、しっかりと頷いていた。それを見たレティシアはノアへ視線を送る。
それがどういう意味か理解するとノアはウィンクを返す
レティシア
「皆さんの幸福を願って。…フィピテオ!」
ノア
「ルーウェル!」
2人が同時に唱えると空に沢山の花火が咲き誇った。色とりどりの花火を見て民は歓声を上げた
ルシアン
「洒落やがって」
レティシア
「ふっ…たまには良いだろ」
隣に立つルシアンが肘で彼女の腕を小突くと、レティシアは満足そうに笑いながらノアと上げた花火を見上げた