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dcst 夢小説 短編まとめ

第3章 【ルリ】君にありったけの幸福を


「四葉のクローバー探し?」
「うん、クロムに誘ってもらってね。僕も一緒に行くんだ」
 石神村の村長の家にて。桜子が一緒にどうかな?と告げて彼女——ルリの前に手を差し出した。ルリは少し躊躇いつつも少年の右手に手を重ねる。
「四葉のクローバー、お母さんから聞いた事あるよ。見つけたら幸運になれるんだって」
 春の快晴の空の下、桜子とクロム、ルリ。三人で地面に座り込みクローバーを探してまわる。ルリの発言に、おぅよ、とクロムが頷いてこう宣言した。
「見つけたら、お前の病気も治るかもな」
 クロムの発言に、ふんわりと笑って桜子が返す。
「ははっ、そうかもね。……っ、こほっ」
「おい、大丈夫かよ?」
 言ったそばから咳き込む彼に、クロムとルリが心配そうに顔を覗き込む。桜子は大丈夫、と収まった咳の手前そうにっこり笑って見せたものの、まだ少しだけ胸がきりりと痛んでいた。ならいいけどよ、とクロムが言う中、ルリは心配そうに彼を見詰めていた。
「……無理はしないでね」
 ルリの言葉にうん、と彼は三葉ばかりの花畑に視線を落としながら頷いた。最初に誰が四葉のクローバーを見つけられるか競走な?と提案した桜子に、二人が乗った。夕暮れまで必死で探す中。
「!あったよ、四葉のクローバー」
「マジか!ルリやべーな」
 ルリが最初に四葉のクローバーを見つけた。クロムと桜子がよくよく見せて貰えば、確かに葉が四つ付いている。他のは全部三つなのに、どうしてこれだけ違うんだろうな、と桜子はふと疑問に思った。いや、毛色が違うからこそ四葉のクローバーは特別なんだ。そう自身を納得させた頃に、ルリが彼に向かってクローバーを手渡した。
「……?ルリ、君が見つけたんだから、君のじゃ」
「ううん、私は要らないの。花言葉、って知ってる?お母さんに教わったんだけどね、お花にはそれぞれ意味があるんだって」
 曰く、葉の一つ一つにも意味があるのだとか。希望、信仰、愛情。四葉のクローバーならば四枚目がある分、幸福の意味が付け加えられる。桜子は博識さもそうだが、それ以上に自分で見つけた幸福を譲ってくれるルリのその心が綺麗だと思った。
「ありがとう、ルリ」
 いいえ、と首を振った彼女とクロム。三人で笑いあった。
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