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SketchBook【R18】

第14章 Sketch5 --朝凪のくちづけ



階段を下りてゆっくりとこちらへと近付いてくる。



「……よう、チビ」


チビじゃない。
身長160センチあるから。



「お出かけ、してたの?」

「仲間内で。 連休だからなー」


寝みぃな、彼が呟いて私が立っている隣にどすんとお尻を落とす。

仲間内。

彼の友だちなんか私は知らない。
……呼び捨てで呼ばれるような、親しそうな女性がいるとか。

複雑な気分になりつつ私もその場に再び腰を下ろした。


「……私も、お酒飲めるよ?」


少しなら。


「オマエには10年早い……夜明け前か。 いい時間に来れた」


そもそもタクマさんは口数が多い方じゃない。

こうやってぼんやりと海を眺めるのが好きなんだと思う。


それを邪魔しない様に口を閉じる。

そして私はこんな風に一緒に静かに過ごす時間が好き。




ボォ───────……



時々波に混ざる汽笛の音に耳を澄ませた。

タクマさんは橙色のグラデーションが広がる明け空をじっと見上げていた。


彼の横顔をちらりと見てから、もう日の出が間近の、正面の水平線に架かる黄金の帯を見詰める。



「タクマさん、私……大学卒業したら…こっちで働こうかと思うんだけど」


「……なにそれ、物好き?」

「構わないかな?」


「何で…オレに聞く」


「好きな人が、ここにいるから」



しばらく返事を待つも反応が無い。


「そしたらこうやって、毎朝一緒にいていい?」



「綾乃の頭ん中はまだ夏休みか……」



そう言って小さく笑う。

また適当にはぐらかされてる。

でも私は負けない。


「迷惑じゃないって思う?」


「昨日、止めとけって言った」


「止めない」



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