第4章 第9章 風柱と那田蜘蛛山 586ページ付近

杏寿郎に手を差し出されたは小さな包みをその手に乗せ、代わりに風鈴を受け取って両手で大切に包み込む。
そして笑みを浮かべたまま包みを開ける杏寿郎を穴が空くほどジッと見つめ続け……杏寿郎の体を小刻みに震えさせた。

「フフッ、もう開くから待っててくれ」

その言葉の通り包みはすぐに全て開かれ、中から赫い硝子玉が3つ連なった帯飾りが杏寿郎の長い指によってそっと摘みあげられた。
それと共に楽しげな色をたたえていた瞳は、穏やかなものへと変化していく。

「杏寿郎君は隊服以外、浴衣やお着物をお召しになられていますので……一緒にお買い物で外に出る時に付けていただければと思いまして。いかがでしょうか？」

自信なさそうに眉を下げ見上げてくるの表情を一瞬瞳に映し、杏寿郎は言葉だけでなく行動でも嬉しいと伝えるように、ギュッと自分より遥かに小さな体を抱き寄せた。

「すごく綺麗だ。こういったものは買ったことがなかったので世辞抜きに嬉しい」

「良かったです！店主さんに違う色の物を見せていただき、その時点で一目惚れしまして。それにしましても贈り物は選ぶのもお渡しするのも緊張しますね。本当に……気に入っていただけてホッとしました」