第4章 第9章 風柱と那田蜘蛛山 586ページ付近

「……？ご主人、この風鈴をいただけますか？」

両手で顔を隠している店主に杏寿郎が首を傾げる一方、は今までの事と今現在の状況が頭の中でグルグル巡り、倒れてしまうのではと心配になるほどに顔はもちろん首まで真っ赤になっている。

せっかく店主が顔から手を離してものそんな様子が可愛いらしく、危うく再び顔に手をあててしまうところだった。

「すみません。あまりにもお2人が素敵だったのでつい……すぐにお包みしますね」

杏寿郎は店主にニコリと微笑んで頷きをチラと見遣ると、顔の赤さはそのまま……手際よく紙に包まれていく風鈴を嬉しそうに見つめていた。
風鈴1つにここまで喜んでくれるに杏寿郎は笑みを深めて頭を撫でる。

「夏が来るのが待ち遠しいな。が望むなら夏以外も吊るして構わないぞ？」

「本当ですか？！でも冬に風鈴の音が鳴って、杏寿郎君は嫌ではないですか？寒く感じてしまわないですか？」

涼し気な凛とした音が鳴れば寒く感じてしまうかもしれない。
しかし杏寿郎にとってそんな事は大した問題では全くないようで、笑顔のまま答えた。