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月夜の欠片

第16章 再会


銀色の髪に黒曜石のような瞳を持つ少女は今日から通う大学の門の前に佇んでいた。

「今日から大学生です!保健の先生になるためにお勉強頑張らなくては!でも……ずっと見付からない。高校でもお会い出来ませんでしたし……お金を貯めて探偵に」

地面とにらめっこして思案しつつポツポツ呟きながら門の中へ入っていくと、物凄い勢いで走りよってくる音が少女の耳に入り何気なくそちらに視線を向けた。

その瞬間にこちらに向かってくる青年へ向かって全力で走り出す。

(やっと……やっと会えた!早く、速く!)

双方の速度は周りにいる者が驚く程に速く、あっという間に2人が目と鼻の先に辿りついたかと思うと、広げられた腕の中に少女が勢いそのままに飛び込んで行った。

その衝撃を緩和させるために青年は体を素早くずらしてから抱きとめ、クルリと1回まわってから強く抱きしめ直した。

「初めまして。前世では煉獄杏寿郎だった者だ。をずっとずっと探していた!」

「初めまして!前世では月神でした!……杏寿郎君、私もずっと探していました。これからもよろしくお願いいたします!」

顔を上げて大好きだった炎のような瞳を覗き込もうとするもそれは叶わず、代わりに温かく柔らかいものが唇に触れた。

それが口付けだと気付いた時には顔に血が一気に上り茹でダコのように首筋まで赤くなってしまう。
その様に笑みを零して唇を離し、熱くなった頬を撫でた。

「は変わらず愛らしいな!もちろんこれからもよろしく頼む!これから時間があるなら色々教えてくれ、君の今の名前やご両親の話も聞きたい」

「杏寿郎君相手だと何年経とうと変われないようです……はい!私も教えてください。でも一日では足りなさそうですね」

「これから時間はたくさんある!明日も明後日も……平和な世界で共に過ごそう」

青年は笑顔で頷く少女の手を取り校舎へと歩みを進めた。

青年の髪には赤から黄に変わる髪紐、少女の髪には赤の髪紐が結び付けられており、機嫌良さそうにゆらゆらと揺れている。

長い年月を経て再会できたことを喜ぶように。
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