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月夜の欠片

第16章 再会


生まれた日から力強くも温かく優しく育ててくれた父親の願い。

2人は顔を見合わせて頷き合うと、紅寿郎が静かに立ち上がって自分たちの子供を呼ぶべく部屋を後にした。

「ねぇ、お父さん。私、お父さんとお母さんの子供に生まれて本当に幸せだよ。2人は私にとって誰よりも尊敬する人なの。お母さんに……会ったら……そう伝えてて欲しい」

杏寿郎は涙を流す自分の娘に腕を広げて胸元へと誘い、譲りの綺麗な銀の髪を撫でる。

「俺も……俺とも朱莉と紅寿郎の親になれて幸せだ。肉体はなくなれど、君たちをずっと想い続けている。そして君の想いは確かに預かった、必ずに伝えよう」

久しく感じていなかった父親の温かさに心が満たされる一方、徐々に弱くなる心音に言い表しようのない痛みが走った。

しかしそれを無理矢理押し込めて笑顔で杏寿郎を見上げた。
杏寿郎がを笑顔で見送ったように、杏寿郎が最後に見る光景を家族全員の笑顔にしてやりたいから。

「約束ね。あ、紅寿郎……だけじゃなくて皆来ちゃったみたい。お父さん、私はもう舞う体力がないから一緒に見よう。疲れたら私にもたれかかっていいからね」

「ああ!何とも贅沢で幸せな時間だ!では早速お言葉に甘えさせてもらうことにする」

孫や曾孫たちが到着する中、杏寿郎はほんの少し朱莉の肩に体を預け演武が始まるのを静かに待った。
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