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月夜の欠片

第13章 あかり


「皆さん落ち着いて下さい!まだ生まれてませんが経過は順調との事ですよ!あと少しです」

湯の入った盥を運ぶ禰豆子が居間の前を通り過ぎようとしたが、あまりにも落ち着きのない男たちを安心させようと穏やかな笑みで今の状況を教えてくれた。
だがここで男たちに捕まるわけにはいかないので、質問などが飛び出す前に早々にその場を後にしてしまった。

「ね、禰豆子少女!もっと詳しい状況を……行ってしまった!む、これから父になるものとしてしっかりせねば!や女子たちに負けてはいられん!して父上、俺や千寿郎が生まれる時……父上は……父上、大丈夫ですか?!」

自分たちが生まれる時、父上はどのように過ごしていたのか……と聞こうとその父上に体を向けると、父上は驚くほどに身体を震わせ千寿郎に支えられていた。

「俺は大丈夫だ!お、お前たちが生まれる時は……今この部屋の中にいる者と同じ動きをしていた!近所の奥方たちに窘められた記憶がある!」

普段なら自分の失態を話す槇寿郎ではないが、さっきの涼平の言葉がよほど不安を煽ったのだろう。
見ている皆が冷静さを取り戻すくらいにガタガタと体を震わせている。

「父上、さんは大丈夫ですよ!別室に移動される際も笑顔を向けて下さいましたし、今も……声を抑えて僕たちを心配させないよう心配りしてくださっているくらいですから」
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