第8章 第26章 月と太陽(1874～1878ページ)

杏寿郎が紡ぎ出したのは、正しくが蜜璃に稽古の合間で教えてもらい一緒に歌った歌だった。
軍歌らしいがが歌えば力強いはずの歌も、ただの話し言葉に聴こえるのだから致命的である。

それと比べて杏寿郎は蜜璃と同じく音程が全くズレることなく……すごく上手だ。

(自分で言うのもあれだけど……私が歌うのとは雲泥の差です。杏寿郎君に苦手なことはあるのでしょうか？)

自身の音楽的才能の皆無さを改めて痛感させられるも、低く良く通る杏寿郎の声は聞き心地がよく嫉妬など浮かぶ隙もない。

そうして一段落ついたところで声を途切れさせ、ジッと聴き入っていたへニコリと笑みを向けた。

「こうして願われて歌うのは少し照れるな！この歌は知っていたか？」

「あ……はい！柱稽古の時に蜜璃ちゃんから教えていただき、一緒に歌った曲でした！それにしても杏寿郎君は歌も上手なのですね！私は踊りに関してはどうにか合格を得られましたが、歌に関しては笑顔のまま固まられて終わっちゃいまして……お恥ずかしい限りです」

杏寿郎の問い掛けで我に返ったは、目の前で柔らかな笑みを浮かべてくれている杏寿郎に笑顔を向けた後に、自分の壊滅的な音楽的才能に苦笑いをこぼしている。