• テキストサイズ

君想う

第2章 わかばが萌える


実弥は何度か彼女を作ったことがある
しかし誰も好きになることはできなかった
好きな人を忘れることができないでいたからだ

今目の前に座っている彼女に無理矢理でもキスができたらどれだけ楽になれるだろう
でも、それはできない
してはいけない
実弥は必死に自分の気持ちを抑え込んでいた




「俺がキスしたら嫌か?」
「え?」
「今、ここで」

そう言ってちひろの頬を触る実弥

「えっと...わか、んない..」

目を逸らすちひろに「ふっ」と実弥は笑う

「嘘だよ」
「やめてよ!そんな嘘ぉ」
「大丈夫だ。無理矢理なんてしねぇよ」

ぽんぽんと優しく頭を撫でる
その手がどれほど温かいと心地いいと感じたか
ちひろは実弥の顔を見ることができないでいた


「おはぎも食べたし帰るか」
「もう帰るの?」

寂しそうに言うちひろ
心揺れる実弥

「寂しいじゃん」
「だったら一人暮らしやめろやぁ。実家帰れ!」
「嫌よ!夢にまで見た一人暮らし楽しんでんだから!」
「その割に自立できてねぇんだよなぁ」

「うっ」と痛いところ突かれたちひろは何も言い返せない

「なんかゲームでもねぇの」
「桃鉄あるよ」
「懐かしいなぁ」
「やる?」
「おぉ」

ゲーム機を起動させちひろがコントローラーを実弥に渡す

「私も久しぶりにする〜」
「桃鉄とか1人でやってもつまんねぇだろォ」
「友達呼んだ時にしようと思って買ったんだけど」
「友達いねぇもんな」
「いるし!」

実弥はこの距離感がとても居心地がよかった
自分の気持ちを吐き出せば壊れるかもしれないこの距離感を
壊す勇気がなかった

/ 58ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp