第23章 私の記憶
次の日から千は私の病室に居座るようになった。
千の話しを聞くと、1回は会わせてもらえたけどそれ以降会わせてもらえないと言っていた。
千は私の怪我に遠慮しつつ、ここぞとばかりに甘やかそうとしたり、自分もベタベタと甘えてくる。
いつもなら怒るところだけど、弱ってる千に冷たくはできないし放っておけない。
千が帰った後、万が様子を伺いながら部屋に入ってきた。
「千は帰ったのか?」
「うん、すっかり弱ってる。万に会えないって。お父さん、怒ってるの?」
「いや、怒ってるっていうか・・・悪い。俺もわからないんだ・・・」
「そうなんだ・・・」
万もわからないんじゃ、どうしようもないか...
「昨日の話なんだけど・・・今までの七桜の行動とか発言とかできるだけ思い出してみたんだ。それで、ちょっと変だなとか何かあるのかなって思ってた自分に気が付いた」
そう思ったら、聞いた話がストンっと落ちてきてすべてが噛み合い納得できたと言われた。
「信じてくれるの?」
「七桜が嘘吐いてるとは思ってないし、今回の事も後悔してただろ?ごめんな、もっと早く話し聞いてあげてればよかった。辛かっただろ?」
「ごめんね・・・うち、万がRe:valeじゃなくなるの嫌だった。でも、記憶のRe:valeじゃなくなるのも嫌だったの。どうすればみんなにとって1番なのか考えた。でも、うちはみんなのこと大事だと思いながら自分のことしか考えてなかったんだよ・・・」
万が怪我して1番傷付くのは千なのに...
でも、ちゃんと万の事も大事なんだよ...
と言ってる事はめちゃくちゃになる。
「俺たちのこと思ってくれてるのはわかってるよ。記憶があるからって、未来を変えることは考えてるよりずっと難しい事なんだと思う。変えようとしても変えられないこともあるかもしれない、先を知ってるからこそ怖いと思う」
今回の事故は防げたようで、結果としては防げてはいない。
防げたとしても、別なところで怪我する可能性だってある。
「七桜は今までよく頑張ったよ。話してくれてありがとう」
泣いてる私を慰めるように頭を撫でてくれる。
「辛かったな・・・色々考えさせてごめんな。もう自分を責めなくていい。記憶があることで出来ないことがあったとしても」
そんな風に思えるときがくるのかな...