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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第15章 縛りの為の呪物


129.

平凡的生活を送ってきた人間が、上級クラスの人間と旅行を共にしたとしたらどうなるか。
……うん。それはきっと目玉が飛び出るんじゃないのかな、昔の映画のトータル・リコールのように、建物の外に生身の人間が飛び出て目がもりもり出ちゃうくらいに……いや、言い方が大げさか。

はしゃぐ以上の感情に至り、無となった状態で空港で迎えを待っていると送迎の車がやってきた。送迎車っていったらそれこそホテルのロゴの入ったワゴン車とか、良くて高専の黒塗りの車とか。
でもこの男が準備したのは"そういう所だぞ"レベルのもの。

キィ…、と目の前に停車した車はまるで車界のダックスフンド。そうなかなか見ない長さ。
そっと悟を見る。ついでに車に指も指す。

『あの、これ……』
「ん?何?ハルカ、知らないの?リムジンって言うんだけれど」
『いや知ってるけどさ~…』

りむ、じん……。ドアが開けられて見える内装はバスのサロン席みたいな…車内で寛ぐにポイントを振った広さですねえ…という、ぽかんな状態の固まった私を悟は押し込みリムジンは発車した。

とりあえず座り車内のサービスの良さにビビりながら、借りてきた猫となっている私は若干震えながらに、面白がりながらチョコレートを摘んでる悟のシャツの端をつんつんとつまむ。

「んっふ…!めっちゃツボるんですけど……ウヴンッ、どうしたの、ハルカ?」

『ツボってんじゃねえよ…?
あのさ、せっ……生活水準とかちょっと考えて下さりません…?これじゃあ楽しむどころじゃないでしょ……何さ、ファーストクラスとかリムジンって…現代版の竜宮城に連れてくつもり?』

プールだって冷水に体を慣らせてから入るじゃん、それと同じ様にこういう世界も一気に経験する免疫が私にはない。初めての回らない銀座の寿司は寿司だけだったからまだ良かったけれど、畳み掛けている今回。
ツボに入って笑っていた悟も流石にやりすぎで可哀想だと思って来ているらしく。

「いつもなら慣れてって言いたい所だけれど。僕も流石にハルカにやりすぎた感を今になって感じてきたよ……」

……今になってかい!
ツッコミたいけれどそれを車内の炭酸水で流し込みつつ、喉を潤す。日は落ちてもやはりこっちは気候が暖かいし。喉も乾くし。
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