第2章 視界から呪いへの鎹
時々、ドアがこちら側に押されては押し戻すという、消耗戦。明らかに脱衣所が有利かつ、性別的にも筋力は上。
永久に続くことは無いことは分かる。私には説得が効いて龍太郎が居なくなるか、悟がたまたま来るか(私にちょっかい)の二択しかない。
「……分かりました」
すりガラスの向こうの影が離れる。
え、ええ…結構あっさりと諦めたじゃん。足音が遠ざかり、物音も聴こえないし。祖母に命令されて私が拒絶したから無理でしたーって報告でもしにいったかもしれない。
……疲れた。お風呂に浸かり直そう。ただその前に湯船に浸かってる時に来られると困るから安全確認しとこう。
そっと、音を立てないようにドアノブを下げ、ゆっくりと手前に引く。
「はい、あなたから開けて下さいましたね」
待ち伏せていたであろうスーツ姿の龍太郎がすりガラスに映らない影から現れた。そして彼はニコォ、と笑って片腕でドアを開け放ったのだ。