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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第9章 五条求婚する


74.

ガラッ、ゴッ…ゴドド……ッ…ド…

そんな瓦礫をかき分けるような音がこのエントランスホールに響く。
重低音が建物全体に響いてたのとは違う、すぐ近く。まるでキャンプファイヤーでもするように灯し始めた明かり。足元のぎゅっとしたこの痛みは0距離という確かな感覚。

パンダの開けたドア、遠くの狗巻が呪霊を叩きつけて割ったガラスとそれを外側から止めていた板。それ以外は暗い室内で、私達が持っている懐中電灯の真っ直ぐな明かりだけが頼りだった。
右足首の痛みを感じる前に、その右足首からの燃える明かりが室内を広範囲に照らしている。懐中電灯じゃ照らしきれなかった室内の様子が今になって良く分かる。
そして先輩達の視線が下に向かった瞬間も。

エントランスホールの床、くすんだタイルを全体的にひび割れを作る中心が私の右脚の下。盛り上がり砕けた瓦礫から、到底人間ではない痩せ気味の赤黒い手が私を拘束している。
当然、敵を呼び寄せる代わりに自身の意志とは関係なく反撃する呪力がその手に反撃しているけれど、この手は相当の格上のようだ。燃えながらも全く怯むこと無く掴み続けてる。
その足を引っ込めようにも引っ込めない、まるで強力な接着剤で固定されたように靴の裏から動かすことが出来なかった。

「おまっ…それ、」

周囲の警戒から一気に足元へと警戒へと変わる。
ミシ、という音が聴こえた。建物では無い、自分の体が軋む音。足首からミチミチと聞こえてくる。それは骨が軋む音、肉がじっくりと圧迫され千切れていく音。これまでに経験したことのない痛み。

『んっ…く、…ぅ!』

喚きたくはない。必死に我慢して怒髪天でその手を狙おうかとした所、パンダがその手に向かってドゴォ!と一発拳を打ち込んだ。
私の足には当たらずに見事ジャストミートした。
当然その威力には相手にも効いてこそ引っ込んだのだと思うけれど…今までの重低音の意味を知る。
ガラッ、という音は中心にいた私ごとその呪霊が突き進んでいたであろう空間へと飲み込まれていく。

『(あ……)』
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