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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第2章 視界から呪いへの鎹


おちゃらけてそういうけれど。
その話の流れは必然的に、私の恩人である悟でさえも敵かもしれないという考えに至った。
疑いの目を向ける、だって……そういう事なんでしょ?

『それって…、悟さんが私を、自身の身代わりにするために私に目をつけたって事?その為に助けたって事……?』

「あはっ、……クッ、ククク……、そう思っちゃう感じ?」

肩を震わせて不気味に笑っている。
怖いと思った。だってその盾を、身代わりを見付けてここまで連れてきて、自力で少しでも生かして…最期まで道具として使おうとしてるんじゃないのかって。
止めた私の足。悟も遅れて足を止めた。
ジャリ……、ジャリ、
私はそこから数歩、下がって建物の方向へと全力で走って戻った。

「あっハルカちゃんっ!?」

後ろで叫ぶ声が聴こえたけれど、私は構わず門をくぐった。


****


門をくぐって、静かな庭を歩く。
どうしてこんなに広いのに静かなのか、少しだけ分かった。それは庭を周っていけば異様な光景が嫌でも目に入る。
玉砂利を踏みながら、その光景から目が離せない。ゆっくりと私は近付いていく。

──名前の刻まれた石碑がずらーっと並んでる。
奥ほど石碑が脆く崩れ、手前程新しい。一番手前の新しいモノには既にリョウコという母の名前。左右にはまっさらな石碑。きっと祖母や私が死ぬ時に刻まれるものだと嫌でも理解した。

ジャリ、ジャリ…ジャリ。背後から近付く音。

「そちらは春日家の身代わり済みの者達です、お嬢様」

『お、お嬢様……』

声を掛けられて思わず反射的に振り返ると龍太郎。ぴしっとした背筋で立ち、説明を加える。私はずらりと並ぶ石碑を眺めながらそれを聞いていた。

「春日家は昔ほど多産で、女性を多く雇われた呪術師等に派遣されていたそうです。現在では春日の血を引くのは当主とお嬢様のみ、他は既に身代わり済みです。
命を引き換える術式、その運命を抱える春日家は派遣先から多額の収入を得ておりました。ですので多く産み、男が生まれれば婿に行かせる……なので、このひとつひとつには女性の名しか刻まれません」

へえ、なるほど…。
私と祖母しかもう…居ない、だから先に墓石が用意されていたのかな…。
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