第5章 "好き"が止まらない!
かなり不機嫌そうだなあ。
ホームに電車がやってくるのを見えて、強風が吹く。ここに止まらないやつだったか…いくつもの明るい車窓が目の前を通り過ぎていく。
その騒がしい状態で、屈んだ悟は耳元で囁いた。それはねっとりとした声色で。
「キミが望むならすぐにでも良い狼さんの悟クンは悪い狼さんになれるんだけれど──、」
『……っ』
電車は通り去った。風も強風から微風になっていく。
それでも悟は耳元で囁くのを止めない。
「僕としては良い狼でありたいけれど。他の男をハルカが部屋に上げるんならどんなに良い狼も悪い狼になっちゃうよね?」
もしかして。もしかしなくても。悟は相当嫉妬深いのではないか。
空色の瞳は笑っていなくて、口元は笑ってる。それを見て私は苦笑いをせざる負えなかった。