第20章 星空の下で愛を語らう
「……で、手錠を外すには鍵を使う事はもちろんだけど、もうひとつ方法があんの。なんだか分かる?」
クイズタイム始まった。
……。考えていると悟は「レッツ、シンギングタイム!」となにやら口笛を吹いてる。逆に集中力が削がれるわ、口笛で線香のCMソングを奏でるな。
心を無にし少しだけ考えて、冒頭の条件を思い出して。
その錆だらけの呪物である手錠を見た後に、悟の意地悪そうな顔を見る。結末が分かってしまった。
『ふたりのうちのどちらかが死ぬ…?』
「当たり。動物での実験での結果だけど片方が死ねばもう片方に引き寄せられて身体に留まるんだって。でもここから先は僕の手に持つこの呪物の詳細を知らないし、人間での実験もしてないから推測なんだけれど。
入れ替わった状態で片方が死んで、手錠が外れたなら?」
静まる小屋。そりゃあ周りに人も居ないし元から静かだけれど時が止まったみたいにしん、としてる。
夜の学校は怖いと感じたけれどもこういう話はさほど怖くはない。
腕を組んでふふん、と笑った。
『殺された被害者の体には犯人の魂が入ってて、捕まったのは犯人…だけれども被害者の魂が入ってる!って感じ?』
にこーっと笑った悟は首を横に振って、そのまま封筒に手錠をしまい、やっぱりポケットへと雑にしまった。
「答えは誰も知らない。だって犯人投獄中に自殺したんだもん!
でもね、犯人を知ってる知人曰く、人が変わったみたいだって話なんだとさ!真相は呪物のみぞ知る、ってね!」
「さっ、テントに戻るよー!」と私の手を来た時みたいにしっかりと握った悟。
ドアの無い玄関を出る際にちら、と振り返った。あの手錠の錆の原因は湿気だけじゃなくて、飛び散った血も錆の原因になったんじゃあ…。
改めて呪いが生まれた殺人現場なんだって思うと少しだけぞくりと鳥肌が立つ。
「ほら!ここから先はキャンプデートだよ、仕事はおしまい!」
『…うん。炭起こしして晩ごはんしよっか』
気分を切り替えていこう。人気のない公園でのキャンプではあるけれど悟が側に居ることはとても頼もしくて、少しだけ感じた恐怖も吹き飛んでいった。