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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第2章 視界から呪いへの鎹


母は2年前に死んだ。私と同じ亜麻色の髪、その髪を全て真っ白にしてやせ細っていって死んだ。機能不全……栄養失調から来るもので、原因はそこなんだけれども、たくさん食事をしても、吐くことも下痢をする事もなく、ただただ痩せていくばかりだった。医者も何がなんだか、と匙を投げる寸前での死亡だった。
口にチキン南蛮を運びながら母を想う。
母は髪を真っ白にしても、元気に振る舞っていた。死ぬ間際でも元気に振る舞う母は強く、格好良かった。だから私は染めるならば白を選ぼうとした…と思う。病弱の白ではなく、元気と勇気の白だったから。
容態については急だったから死の知らせは実感が無かった。最後にお見舞いした時にはまだあった、お揃いの亜麻色の髪が残らず白くなっていたのを見て、ああ、命を燃やし尽くしたんだな、と本能的に思えた。
父と、まだ当時家に居た兄と共に病院に行って、眠る母に触れて…柔らかかった頬が酷く冷たく、硬かった事は忘れることは無い。

味噌汁の入ったお椀をテーブルに置く。コト、と控えめな音。私はそのまま食事から父に視線を向けて話しかけた。

『本当はね、私…全部真っ白に染めようって思ってたんだよね』

染めるってか脱色っていうか。
父も味噌汁の入ったお椀をテーブルに置いて、口をもごもごと動かしている。静かに聞くことに徹している父親。
私はそのまま、自分の思いを告げた。

『入院中のかあちゃんさあ、髪、真っ白になっても格好良かったから。私もこの歳で白髪ちょっと生えてるしついでにーって』

「ああ……かあちゃん、真っ白になっても元気に振る舞ってたもんなぁ…、」

父は食卓上の空間をぼうっと眺めている。きっとその空間には父の視点の、母の想い出が浮かんでいるんだろう。
ぼんやりと笑みを浮かべていた。
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