第24章 農業生活二十四日目 前編
食事を手早く済ませ、倉庫へと行った。クベルには、家の前で待って貰った。こんな時だからこそ、見せたくはない。籠に数種類のストックした野菜を詰めていく。私が詰めた籠をリヒトが、クベルのところへ運ぶ・・・を繰り返す。
でも、そう多くは提供できない。ウチに来れば解決すると思われるのも、今後困る要因となるだろうから。それに、リヒトのお店のこともある。
「すみません、これくらいでいいですか?」
「十分だよ。えっと・・・この容器は?」
「加工品です。ハムとかチーズとか。」
クベルの目が輝いた。どれに反応したのだろうか。
「チーズって、リヒトさんのお店で使ってたもの?」
そうか、チーズがクベルは好みなのね。なるほど。
「あのチーズ、美味しかったんだよなぁ。あ~、思い出したら涎が出そう。って言ってる場合じゃなかった、じゃあまたね。」
慌ただしく出発したクベルを見送る。ウチのスプリングクーラーには、最高値の栄養分を混ぜてある。今、肥料って幾らで売っているんだろう?買わなくなってから、随分経つけど価格はそう変わったりしないよね。
「肥料って、高価だもんね。」
「肥料?あぁ、そうだね。街の方も、自然災害みたいだから田舎の様にまで多くの肥料が回って来ないようだよ。肥料を作るにも、その材料も少ないみたいだし。」
ウチはゲームで蓄積した肥料の材料が蓄えられているからいいけれど、そうだよね・・・肥料を作るにも材料が必要だ。
それに、この村に決められた規則。10㎏以上の出荷が義務なんだよね。それさえこなせれば、声かけしなくても住民との友好値が下がらないんだ。一部の人は除くだけど。
「莉亜はマイペースでいいんじゃない?」
「そうだね。他に皺寄せがいくといけないし。」
シビアかもしれないけれど、パルマのとこも何とかするだろうから下手に関わらないでおこう。さて、作業しなきゃ。
見回りの後、私は家の周りを見て回った。出来上がりぶりに驚嘆する。防犯でも安心だし、設備の防犯も安心だ。
「あ、莉亜。ここにいたのね。」
シノンの声が背後からした。
「シノンさん?」
「あのね・・・ちょっと、板チョコってあるかしら?」
意外なものを所望された。シノンさんとは専属契約だから、別に全然構わないのだけど。
「どれくらい必要ですか?」
「一枚・・・。」
随分、控え目だ。