第24章 邁進
「今ので、また呪いを溜めたんだろ」
五条先生に抱きかかえられた身体は、呪いを浴びて全く力が入らなくて。
弱い私を、五条先生が見下ろしてる。
「僕に、流してもいいよ」
試すように、五条先生が言った。
許可のような言い方だけど、この声音はきっと『流せ』という命令だ。
「……先生」
嘘吐きな私に与えられた、二度目のチャンス。
それを逃すわけにはいかなくて。
私は五条先生の頬に手を伸ばす。
すると五条先生が少しだけ背中を丸めて、私がキスしやすいように顔を寄せてくれた。
キスできない言い訳を、ほとんど全部五条先生が奪って。
「皆実……」
涙が、溢れる。
私は――五条先生に、キスができなくて。
「五条、先生……違う、んです」
何も違わないけど、違うの。
五条先生とキスがしたい。
したいのに、呪いの言葉が私の頭の中を廻るの。
「私……っ」
五条先生の手が、私の顔をその胸に埋めた。
私の涙が、五条先生の服を濡らしてる。
「バカ皆実」
大好きな『バカ』が、寂しい音色で消えていった。