第3章 春高予選
数日後、放課後の練習中
「どうしたの影山くん?!」
やっちゃんの声がする
立ち止まって見るとパーカーにキャップ姿の影山くん
「え、俺ってわかるか?他校に偵察しにいこうと思ったんだけど」
「いやぁ…放課後の学校で一番目立たない格好といえば部活っぽい格好では?」
やっちゃんに言われてハッとした影山くんはTシャツ姿になって歩き出した
「橘!」
大地さんに声をかけられる
「はい!」
「影山がよその学校で問題起こさないように、ついてってくれるか?」
「わ、分かりました!」
私は荷物を持って影山くんの後を追いかける
「影山くんっ待って!」
「…橘さん…」
「大地さんがついて行けって…」
「おう」
影山くんはポケットに手を入れたまま私の前をスタスタ歩く
会話はない
何か怒ってる?
影山くんが向かった先は青葉城西高校
私が烏野に来る前IHで負けた相手
ああ、ここを見たかったんか
しかもここのセッター、翔陽は大王様って言うてたけど、影山くんの中学の先輩やって聞いた
バレんようにせんと…
って…
「影山くん、めっちゃ不自然やから!青城の生徒に変な目で見られてるから!」
「そ、そうか?」
「うん、もうちょっと普通にして」
私たちは体育館に向かう
陰からコッソリ練習を偵察する
「あれって大学生かな?」
「ああ、多分な」
青城は大学生と練習試合してるん
爽やか風イケメンが大学生チームに混じる
あの人がセッター?
ってことはあの人が影山くんの先輩の大王様
大学生チームの中で、それぞれの選手に合わせて打ち易いトスを上げている
「何回かあのチームに混じったことあったんかな?」
「いや、多分今日初めて会う人も居ると思う」
「え?」
「前に白鳥沢のウシワカが言ってた。及川さんはどんなスパイカーにでも最高のトスをあげるって…多分会って間もない人にでも」
なんか…
侑みたいや
「俺、戻るわ。悪かったな付き合わせて」
「あ、ううん」
「本当は月島といたかっただろ?」
「え、ツッキー?なんで?」
「付き合ってんじゃねぇのか」
「いや」
「…でも合宿でキスしたって」
「え…何でそれ影山くんが知って…」
「俺、よくわかんねぇ
…付き合ってもない男とキスしたりすんの」