第7章 選抜合宿
予期せずして合宿に参加することになってしまった
「影山というセッターのいないお前に、俺は価値を感じない」
鷲匠先生は翔陽を見据えて
「ボール拾いが嫌ならいつでも帰っていいぞ」
そう言って教官室を後にする
何かを堪えるように俯いていた翔陽が顔を上げ、鷲匠先生を追うように教官室から出て行った
「あの、橘さんって言ったね?」
教官室を出ようと扉に向かっていた私を穴原コーチが引き留める
「あ、はい」
「烏養コーチから聞いたけど、君、あの稲荷崎から転校してきたんだって?しかもバレー部のマネージャーだったとか…」
「まぁ、そうですね。6月にはこっちに転校してきましたけど…宮兄弟のことはバレー始める前から知ってます」
「そうか…君の目から見て、日向くんはどうだろう?」
「え、どうって?」
「いや、実はこの合宿、僕は日向くんを推薦してたんだよね。あの身体能力と圧倒的センス、でも何せ鷲匠先生は…」
「高さこそ正義ですもんね」
「そう、シンプルな強さを求めておられるからね」
「でも…私自身は翔陽のウィークポイントは体格じゃないと思ってます」
「ほう」
「翔陽は私より小柄ですけど、それを補う身体能力があります。不利ではありますが、決定的な欠陥ではないです、絶対」
「なるほどね」
「今の翔陽に足りんのは、なんていうか…攻撃力に見合った他の能力というか…うまく言えませんけど…どんなに攻撃力が高くても、全国で戦うには守備が壊滅的すぎます。レシーブせんことには、攻撃できませんからね」
「確かに」
「でも…それが分かってるからココに来たかったんちゃいますかね?合宿きても背は伸びひんけど、一流選手との交流でプレイは磨けますから」
きっと翔陽は無理矢理押しかけてきたこの合宿で、何かを得るに違いない、私はそう信じてる
「そう言えば…」
「なんですか?」
「今、烏野の影山くんは全日本ユースの合宿中なんだよね?」
「はい、そうです」
「稲荷崎からも宮侑君が招集されてたよ」
!!
「え、そうですか」
「君がいた高校、どちらのセッターもユースに選ばれるなんて…」
「偶然ですけどね」
「どちらも春高の県代表だし…勝利の女神ってやつかい?」
「そんなん違いますよ」
ペコッとお辞儀をして、私は教官室を後にした