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【イケメン戦国】白衣の戦姫

第14章 姫さん、特訓する


華音の朝は早い。
というのも、限られた時間内で十分に睡眠をとるすべを身につけているから。
医者というのは生活習慣が安定していない。
当然治療のために不眠不休で動くことだってある。
特に、華音の言う軍医という職業は。

朝早くに目覚めた華音はよく城内を回る。
自分のいる場所を正確に把握したいからだ。



(的と弓)



ふと、足を運んだところに誰でも使用可能な弓矢と的があった。
的は広い庭でこちらから一定の距離を置いて固定しており、使い込んだ跡が残っていた。



「………」



華音が触ったところで咎められることはない。
それに誰も見ていないからいいか、と華音は手前の弓矢を持った。



同時刻、華音同様に早く目覚めた家康は、外の空気を吸いに出ていた。
よく足を運ぶ場所へ行くと、いつもはこの時間にほとんど無いはずの人の気配がした。
こちらが気配を消したまま見ると、そこには自分より一回り小さな背中が見えた。
華音だとすぐに分かった。

華音はおもむろに弓矢を持ったと思えば、的の距離が一番近い場所に足を止めた。
そして、どことなく不慣れな手つきで弓に弦をかけた。
子供が玩具で遊ぶようなものとはまた違う仕草を、家康は黙って見ていた。


左手で弓を支え、右手で弦と矢の端を持って右肘を引く。
ギリギリ、と弓と弦が反る中、力を緩めずに矢の先端を的の真ん中へ向けて標準を合わせる。

“その時”が来て、まるで華音の周りだけ時が止まったようにぴたりと静止した。



(……あ、中る)



家康は反射的にそう思ったと同時に、華音の右手の指が離れようとする。

そして___





「華音!!」

「「っ!!」」



聞き慣れた声が聞こえた瞬間に華音の手が離れ、放たれた矢が空気を切った。



「秀吉どの、おはようございます」

「おはよう…朝早くからこんなところにいたんだな」

「はい。やってみたくて」

「家康もいたのか」

「おはようございます家康どの」

「…ああ」



家康の視線の先は、的ではなく地面に刺さった矢があった。



「…秀吉さん、恨みますよ」

「なんでだよ」
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