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【イケメン戦国】白衣の戦姫

第9章 姫さん、拐われる


本人に自覚があるかは知らないが、華音はとっくに信長達から認められていた。
医者として、織田ゆかりの姫として、何より、自分達のそばに身を置く者として。

それはもちろん、信長の命を助けたからだけではなかった。





華音が安土城に来て間もない頃。
適応力が高いとはいえ、現代で生きていた華音は500年も前の日本はほぼ未知の領域だった。
理系人間なのもあり、戦国時代の知識としてあるものも少ない。
器用さと要領の良さで作法云々は何とかなっているが、いずれ限界が来る。

故に、最初の頃は三成に勝手を教わっていた。
忙しい彼の合間を縫ってもらうのはあまりに申し訳なかったので、彼の仕事を出来る範囲で手伝うことで借りを返して。



「仕事がいつもより捗った気がします。本当に助かります華音様」

「いいえ、計算くらいしか今は役に立てなさそうだから」



流石に三成ほどの立場となれば、簡単に他人に任せられる仕事はやって来ない。
だから華音は金勘定や献上品関係の計算など、深く踏み込まず、かつ三成の負担を減らせる具合で手を貸していた。
実際のところ、三成の仕事はかなり進んでいるのだが、そのあたり二人はなかなか鈍感で気づかない。



「…おや、これはこれは三成殿」

「御家老、いらしておられたのですか」



三成と廊下を歩いていた時、きちんとした身なりの男性と鉢合わせた。
孫もいるような年齢に見えるこの男性は、おそらく長く織田に仕えているのだろうと華音はみなした。



「若いのに大仕事がやまず大変ですなぁ」



嫌味だ、と華音にはすぐ分かった。
社会的な立場としてはおそらく御家老達の方が強いが、事実上の立場としては三成の方が上だ。



(そしておそらく、この人はそのことが気に食わない)
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