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【イケメン戦国】白衣の戦姫

第6章 姫さん、謹慎中


信長が華音を個人の感情で殺せない理由。
それは、華音を殺せば、織田家と伊達家の仲に亀裂が入るからである。

裏付けるのは先の戦のこと。
これも偶然が重なって起こったことなので、誰の責任でもない。

華音が命を助けた支倉常長は、伊達政宗直属の家臣の一人である。
常長の父は伊達家に大きな恩があり、常長は武功を重ねて伊達家に恩を返していた。
まだ若い常長が家臣筆頭の一人であるのは、それだけの功績を挙げたということだ。
さらに言えば、政宗は現在とある大きな計画を立てており、その最高責任者を常長にしようとしていた。
そのこともあり、常長の命を助けたことは、華音や信長が思っている以上に大きなことだった。

故に、華音が信長の気まぐれで殺されるなど、あってはならなかった。
先の戦に参戦した武士達の信用や忠誠を失う恐れがあるのはもちろん、政宗との同盟にも響きかねないことだった。

奥州を統治する伊達家当主の政宗との同盟は、信長の目指す天下布武には絶対に欠かせない。
華音を殺すことは不利益しか生まないものとなっていたのだ。

それら全てを踏まえた上で信長が華音にどう対応するのか、華音は推し量ったのだ。
たちが悪いどころの話ではない。



「俺の寵愛も望まず、己の力で己の価値を示す女など初めて見たわ。あのような末恐ろしい女、女狐すら可愛く見える」

「女狐と言えば…秀吉が似たようなことを言っておりましたね」

「ああ、華音を連れてきた日のことか」

「あれから秀吉は、あの娘とどう接していればいいのか決めあぐねているようです」

「己にとって華音がどういう存在なのかわかっていないだけであろう、あの猿め」



二人が振り返るのは、華音が初めて安土城に来た日のこと。
秀吉と三成に城内を案内されている時に起こったことだった。






『___この廊下を伝ったところに天主の道があります』

『天主?』

『ここ安土城では天守のことを天主と呼んでおります。城主であせられる信長様が住んでおられます』

『華音、くれぐれも変なことは考えるなよ』

『変なことって何ですか』
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