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【イケメン戦国】白衣の戦姫

第20章 狐の喜劇


ぱちり。
深く眠っていた華音は、いつもと同じ朝の時間ではなく、やや遅めに目覚めた。
自分の知らないうちに疲れが溜まっていたのだろう。

傍らには、すっかり身支度を整えた光秀が、文机に向かって筆を走らせていた。



「…おはようございます」

「おはよう寝坊助。顔を洗って来い。朝餉の前に話がある」

「はい。…あの、昨日は……」



光秀は顔もあげず、しっしっ、と手を振ってみせる。
『いいから身支度しろ』と言っているのだろうが、華音は改めて礼を言いたかった。



「昨日の貴方の言葉は嬉しかったです」



昨夜の光秀からの言葉を思い出し、華音は穏やかに微笑んだ。



「夫役が光秀どので良かった」

「……っ。……そんないい笑顔をほいほい見せるな。警戒心の欠片もない」

「ん…?」

「そんなことより支度を急げ。お前は無駄口を叩くのに夢中のようだから、俺が水を頭からかけてやろうか、馬鹿娘」

「遠慮します」



そそくさと布団を片付けながら、先程の光秀のそっけない態度を不思議に思った。



(光秀どのは照れるとそっけなくなるのか)



照れているのは分かったが、どこが光秀の琴線に触れたのか全く分からなかった。



「読め」



渡されたのは信長からの手紙。
内容を読むと、華音の顔が徐々に険しいものに変わった。
光秀の表情も、普段通りの読めない表情に戻っている。



「信長様に、朝廷からの呼び出しが……?」

「俺たちが調査している謀反の疑いの件で、京の公家たちに虚偽の報告をした者がいるようだ」



実際は小国の大名が怪しい動きをしている程度であり、その事実関係を調査しているところなのに、『大名が数十万の兵を集めて挙兵寸前、間違いない事実だ』と、何者かが公家たちに吹き込んだらしい。



(一体誰が、何のために…)



朝廷から事の次第を報告するよう遣いが来たと、文には書かれていた。



「急ぎ安土へ戻り、信長様共々京へのぼり公家たちに謀反の実態をご報告せねば。この国の謀反の芽を摘み取ってからな」
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