第3章 8年後
週末の街は人と車で溢れ
活気づいていた
けれど
窓の外の喧騒とは正反対に車内は静まり返っている
信号で車を止めたセツナが
重苦しい沈黙を破った
「……女の子がこんな時間まで出歩いたら危ない…もっと早く帰って来い…」
『……私が何時まで出歩こうが…アナタに関係ないでしょ…』
「…オマエはまだ中学生だ……せめて電話にはちゃんと出ろ…」
『……フン…』
「……それと…学校から連絡があった……もう何日も行っていないらしいな…」
『……』
「……このまま無断欠席を続けるようなら…いくらテストの順位でトップクラスだとしても成績を下げることになると言われた…」
『…別に…成績なんてどうだっていい…』
「……リン…」
『…もう放っといてよ‼︎…親でも無いくせに保護者ヅラしないで…』
「……私は……オマエの父親からオマエの事を任されているんだ…」
『アノ人は父親なんかじゃない‼︎』
「……リン……ボスはちゃんとオマエを…」
『やめて‼︎』
「……」
『アノ人はママが死んですぐに私を捨てた‼︎私よりもアイツらと暮らす事を選んだんだよ‼︎…アノ人の家族はアイツらだけなの‼︎』
リンは窓の方へ顔を向け
静かな声で言った
『……私には家族なんていない……私の父親は…ママと一緒に死んだの…』
小さな肩が震えているのを
セツナは目の端で見ていた
そして
信号が青に変わると
それ以上は何も言わず
黙って車を走らせた