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GIFT 【R18】

第5章 笑顔の裏側




バーで愛子に会った夜
ナナは
心の隅にチクリとした痛みを感じていた


家に帰った後も
ホストの仕事について前に雅から聞いた話を
何度となく思い返していた


一緒に暮らしていても
ナナはまだ
響也が仕事をしている所を実際に観たことは無かった

けれど
華やかな世界なのだろうという事は想像に難くなかった


仕事を終え深夜に帰宅する響也の上着からは
様々な香水の香りがした

愛子がつけていたあの甘い香りがする事も度々あった


仕事の上での関係なのだと
自分に言い聞かせてはみても

愛子の女っぽい装いと
真っ赤な口紅が脳裏にチラついて

そんな時
ナナはとても惨めな気持ちになるのだった



朝方
アラームが鳴るだいぶ前にナナは目を覚ました


眠りについたばかりの響也を起こさないように
そっとベッドを抜け出し
リビングへ行くと

部屋中に漂う香水の匂いを追い出すように
大きな窓を開け放った


裸足のままベランダへ出て深呼吸すると
初夏の夜明けの空気が清々しく身体に染み込んでいった



響也に負担に思われるのが怖くて
ナナは自分の気持ちをずっと押さえ込んでいた


けれど
それもそろそろ限界にきていた


響也にベッドの中で抱きしめられる度
唇が髪に触れる度に

苦しくて
息が出来なくなった



彼の手も
唇も
決して"その先"を求めてはくれなかったから




ナナは
髪を切ってもらった夜に泣きながら交わした
たった一度きりのキスを想い
唇に指をあてた



閉じた瞳から

一粒の涙が
こぼれた









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