第9章 5年後
リサが姿を消してから
5年の月日が流れた
タクミと会ったあの夜以降
サトルは酔いつぶれるまで酒を飲む事はなくなった
その代わり彼は
何かを忘れるように仕事に没頭していった
そして今
彼の演技は世界的にも大きく評価されるようになっていた
そんなある日
大きなイベント会社の接待で
銀座にある会員制のクラブに招待された
普段のサトルは
そういう席を断っているのだが
海外から招いた大物舞台プロデューサーと共に
次の公演の話をしたいとの説得を受けて
あまり気乗りしないまま連れて来られたのだった
案内されたVIPルームで酒を飲んでいると
この店の常連だというスポンサー側の社長が
ママを紹介した
「……この店は…政界財界の選ばれた者達だけがお忍びで通って来るんだ。………ママ……こちらは今度一緒に仕事をする事になった真山君だ。……知ってるだろ?」
「…えぇ…それはもう…………真山さん…今後はどうぞ…ご贔屓にして下さいね…」
「………ハイ…」
「…ママ……マナはまだ来ないのか?」
「……ゴメンなさい……いまチョット他のお席に。………でも…もうじき参りますわ…」
「……マナというのは…この店のNo.1でね。……是非…真山君に紹介したいんだ。……きっと気に入るよ…」
「……ハイ…」
その時
すぐ後ろから声が聞こえた
『……こんばんは……お待たせしてスミマセン…』
サトルが顔を上げると
そこには
鮮やかなブルーのドレスに身を包んだリサの姿があった