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桃紅柳緑【鬼滅の刃】【R18短編集】  

第9章 交淡如水 【冨岡義勇】 1


「義勇殿。起き上がれますか?」
「あぁ。」
上体を起こしたので、あやは手早く包帯を巻き、肩の傷に気を使いながら、義勇の怪我をしている方の手を取り、そっと袖を通す。

布団を敷き、足袋を脱がして足を洗う。布団に移動してもらい、盆にのせた昼食を出す。

「食べられるだけで結構ですので、お召し上がりください。この後薬を飲みますので。」

「・・・あぁ。」
素直になってよかったと思いながら、あやはゆっくり食事をとり始めた義勇を見る。
食事の間に治療の片づけと縁側に広がっている血液の処理をする。食後の服薬を確認して昼の任務は終わり。

「義勇殿。大怪我ですよ。安静にお願い致します。夕刻にまた来ます。」
床に就いている義勇の顔を覗き込んで話しかける。

「・・・また来るのか?」
あやと目を合わすわけでもなく、無表情に天井を見て答える。

「・・・義勇殿。本来ならば入院です。夕食を御持ちし、消毒をさせていただきます。」

「・・・そうか。手を煩わせるな。すまない。」
すまないという言葉から、義勇殿は傲慢なわけではなく、「申し訳ない」という気持ちが前提でのこれまでの会話や行動だったのかとあやは気付く。
「・・・義勇殿。蝶屋敷が混んでいたので、治療をご辞退なされたのですか?」

「・・俺が行くと気を遣わせるし、これ位大丈夫だ。」
この状態で「大丈夫」とは?・・・なんだか少しずれている人だなと思いながら、返答する。

「・・そうですか。では、また後程。・・・何かありましたら鴉を。」
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