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この世界はどうかしている。

第1章 1.


「お前はこの島の者か?」

『わっ…わた…っ』

震えて声が出ない私。視界に入るは銃…。
その存在に気が付いて余計に震えた。

「おい、落ち着け…!」
『ヒッ、こ、殺さないで殺さないで殺さないでっ!』
「チッ、とりあえず静かにしてくれ」

男性は自身が身につけている赤いストールを私に巻く。
触れた瞬間にビクッと体が強張った。じんじんとする下腹部の痛みが、嫌な記憶を思い出させる。

「この辺に生きた者はお前しか居ない、お前にこの島で何が起こったのかを聞きたいだけなんだ」

『……、』

この島の平和が崩された原因を話す。
初めに騎空艇がやってきた事。それにはマフィアが乗っていた事。彼らがやってきて、この島特産のバラを全て持っていかれた事。
それだけで済めば再建は出来たのに……平和な島の住民なりに頑張って抵抗をした。それに本気を出したマフィア達は人を殺し、物を奪い、女を犯し、子供を拐い。
私の家の両親共に殺されて、妹は犯される事に必死に抵抗した為にめった刺しになって死んだ。それを知って私は声を殺して必死に堪えて、終わった後には物陰に隠れて生き延びた。
奴らは気が済んだのか。騎空艇はもう無い。

破壊しつくされた私の故郷。
これからどう生きていけば良いのか、知らない男にぽつりぽつりと話していくと、耐えていた涙腺は緩んでいく。

『私は、これからどうすれば……』

「……お前の思い出の地をこんな事にしたのは、マガザンというマフィアだろう。例えば…、特産のバラ、というとクリスタルローズの事だろうな。それを狙ったのだと思うが……、雪が降ってきたな」

空からちらつく雪。
男は自身の羽織っている上着を脱ぎ、私に被せる。質の良さそうなジャケットなのにわざわざ私に掛けるなんて、と私はこの人に少し好感を持ち始めた。
寒くて体温の残る袖に腕を通す。この人の匂いが染み付いていて、僅かに薬や煙草の匂いなどもする。
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