第9章 日輪刀と羽織
と杏寿郎は日輪刀が届くまでの間、毎日二人でひたすら鍛錬に励んだ。
杏寿郎の提案で午前中はの家族の墓がある山まで走って行き、地形を生かした実戦稽古を行い、午後は煉獄家の庭に戻って技の精度を高めた。
夜は暗闇での実戦練習だったり、精神力を鍛える稽古を行った。三日徹夜の素振りの時はかなりつらく、次の日には1日中腕が上がらなかった。2人で指南書を読むしかない状態になってしまい苦笑いした。
当然、槇寿郎には呆れられたが、太刀筋の正確さと精神力、振りの力強さが格段に上がった。
刀鍛冶の里から日輪刀が届けられた。
杏寿郎は炎のような赤。
も同じく燃えるような赤に色が変わった。
「やはり君は炎の呼吸が合うようだな。」
少し嬉しそうに杏寿郎は言う。
「刀が届いたということはとうとう任務に就く。」
「いよいよだね。杏寿郎。」
「あぁ、いよいよだ。」
2人は赤く美しく光る刀を見て、これからの厳しい戦いを思い身が引き締まった。
刀を眺めていると、杏寿郎が奥から桐の箱に入った物を持ってきた。
「、いよいよ任務だ。良かったらこの羽織を君に贈りたい。」
最終選別突破のお祝いとして、杏寿郎がに羽織を仕立ててくれていた。
杏寿郎が箱から中身を取り出し、広げて見せてくれる。
白い羽織の背中の右裾に籠目模様の染めが斜めに入っている。染めの色はの瞳と同じ翡翠色。
その上に、群青・紫・黄の三輪のアヤメが咲いており、よく見ると金糸や銀糸で縁取ってある。
籠目模様は「魔除け」
アヤメは「希望」「情熱」の意味があるそうだ。
「戦う時の君は凛として美しいからな。立ち姿が凛としている花を選んだ。喜んでもらえるといいが。」
は羽織自体の美しさもさることながら、杏寿郎が自分の為に贈り物を選んでくれたことがとても嬉しかった。
「杏寿郎・・・・凄く綺麗。・・・こんな素敵な物をもらった事が無いからなんて言葉にしたらいいか分からないんだけど・・・、とっても嬉しい・・。」
は羽織をぎゅっと抱きしめながら、満開の笑顔で杏寿郎に言うと、杏寿郎も同じく笑顔で応えた。
「うむ。俺はその笑顔が見たかったんだ。」