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夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第4章 決意へのマーチ【秘匿死刑】


「あ、あの……っ! 井口を治せる人ですか⁉」

 縋るように言う佐々木に、星良は「もちろん」と頷く。

「だって――そのためにあたしが来たんだから」

 筆を滑らせる。一画一画、大胆に、それでいて丁寧に、彼女は巻物へ字を書き連ねていった。


「反転術式――【復元】」


 柔らかな光が井口の身体を包み込み、少しずつ、少しずつ傷痕を消していく。綺麗な光だ。
 光が収束し、井口がゆっくりと瞼を開いた。

「こ、こは……?」

「井口!」
「井口先輩!」

「佐々木、虎杖……? 俺は……」

 よかった、と佐々木が泣きじゃくる。虎杖も、胸に込み上げる嗚咽を呑み込み、ズッと鼻を啜った。

「何があったか……今でも信じられん」

「虎杖……信じられないと思うけど、私たち、変な化け物に襲われて……」

「信じるよ。アイツらは化け物じゃなくて、【呪い】なんだ。あの指は特級呪物って言って、【呪い】を引き寄せたり、強くしたりする効果があったんだよ」

 昨夜の出来事を反芻する。


 呪い、呪霊、呪術師――特級呪物。


 目まぐるしく飛び交う聞き慣れない単語、恐ろしい化け物……まだ、納得できない部分の方が多い。

 ただ、はっきり分かることがある。悪いのは――……。

「悪いのは先輩じゃなくて、アレを拾ってきた俺だ。ごめんな」

 ごめん、ともう一度謝る。
 謝ってどうにかなる問題ではないけれど、虎杖にはそうする以外に思いつかなかった。

 こんなことが起こるなんて分かっていたのなら、拾おうなんて考えもしなかっただろう。
 だが、起こってしまった事実を変えることはできないから……受け入れて、立ち向かうしかない。
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