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夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第21章 唐突に現れたディソナンス【京都校交流会―団体戦―〜呪具】



「【眠れぬ夜を数えて 白くくすんだ羽が 譲れない願いの果てに 抱きしめた一羽片(ひとひら)】」


 パンッと不可視の壁が呪霊の拳を防ぎ、視界に真っ白な羽が散った。
 え、と腕の中の少女を見ると、大きな夜色の瞳に強い意志を湛えている。

「任せて」

「よせ! 狗巻先輩の喉を潰したヤツだぞ!」

 伏黒の腕から出た詞織を強く引き止めるが、少女はゆるく首を振った。

「大丈夫。わたしだって、棘くんとの特訓で強くなった。足止めくらいできる」

 そう言うと、詞織は大きく息を吸い込み、小さな唇から旋律を紡いだ。


「【幸せに満たされた日々 羽(は)含(くく)み続けていたい 忘れない痛みの分だけ 必ず掴めるから】」


 パリンッと不可視の壁が弾ける。強く地面を蹴って、詞織が呪霊に切迫した。
 詞織の握りしめた拳を呪霊が片手で受け止める。

 同じ旋律、歌詞にも共通した要素がある。おそらく、同じ歌。
 だが、先ほどのゆったりした儚い印象のものとは違い、力強く凛と張り詰めた印象がある。

 詞織の歌は基本的に、一曲につき一つの能力しか持たない。それなのに、今 少女が歌っている歌は、防御と肉体強化の二つを同時に行っている。

 それだけではない。
 歌いながら肉弾戦をすることはできなかった。集中力が散漫になってしまうからだ。


「【舞い散る羽に 心 重ねよう 私は独りじゃない あなたのくれた音色 連ねて 夜も越えてみせる】」


 詞織の歌は続く。強く、空気を震わせる。

 呪霊に決定打は入らない。全てを躱され、受け止められる。
 けれど、詞織も決して負けてはいなかった。

 刃を伴った樹木の毱を、詞織が不可視の壁で阻む。
 防がれた毱の後ろから呪霊が迫り、拳を打ち据えてきた。

「詞織!」

 不可視の壁が拳も防ぐ。かなりギリギリの状態なのか。詞織の表情は険しい。けれど、決して悲観した表情ではない。
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