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夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第21章 唐突に現れたディソナンス【京都校交流会―団体戦―〜呪具】


 空いた穴から落下する加茂を確認し、伏黒は満象を影に戻して新たな式神を呼ぶ。


「【鵺】」


 弾けるようにして飛び出した鵺が電撃を纏って加茂を襲った。

「私は」

 加茂が懐から血液パックを取り出し、封を切って鵺に投げつける。


 ――【赤縛(せきばく)】


 血の鎖に縛られ、鵺がそのまま墜落する。

 伏黒は舌打ちして壁面に空いた穴から地面へ降りた。
 加茂も同じく地面に着地する。

「私は負けるわけにはいかないのだ!」

 あぁ、と伏黒は思った。

 加茂には守りたいと思う大切なものがあるのだと。
 それが、負けられない理由なのだと。

 かと言って、手加減するつもりはない。

「それは、俺だって同じですよ」

 メグ、と記憶の中の少女が呼びかけてくる。
 この世でただ一人、自分を『メグ』と呼ぶ少女。

 死なせたくないと思う人間がいる。
 そんな中で、少女――詞織だけは、唯一"守りたい"人間だ。

 詞織を守るためにも、自分は負けるわけにはいかない。

 緊迫した空気の中、互いに相手の様子を窺いながら、ジリジリと時間が過ぎていく。

 そして、ヒュッと呼吸をし、伏黒と加茂は次の手を打つべく同時に動いた――瞬間。



 ――ドンッ!



 最初、何か爆発でも起こったのかと思った。けれど、それは勘違いで。
 そちらへ視線を向ければ、巨大な樹木が天へと伸びている。

「なっ⁉︎」

「なんだ、これは⁉︎」

 意思を持って蠢く樹木は、確実に伏黒たちの方へと向かっていた。

 まさか、誰かの術式か?
 一瞬 過った考えを、伏黒はすぐに捨てる。

 東京校にはあのような術式を持つ人間はいない。
 加茂の反応を見る限り、京都校もいないのだろう。

 樹木を見上げる伏黒の視界に、建物の屋根を駆ける小柄な体躯を見つける。

「狗巻先輩⁉」

 呼びかけると、伏黒たちに気づいた狗巻が口を開いた。


「【 逃 げ ろ 】」


 呪言の強制力が働き、自分の意思とは関係なく、伏黒と加茂の身体が回避行動を取る。それに一拍遅れて、伏黒たちのいた場所を樹木が抉った。

* * *

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